「母ちゃんが死んでから読むマニュアル」なんて、サブつけているけれど、ピンピンコロリと死ななかった場合は、母ちゃん生きていても使い物にならなくなっていると思う。例え、痴呆症と診断がつかなくても、60代を境に心身の能力は落ちていき、70代では社会適応能力が無くなっていくと思う。そして、社会に目を向けられなくなった分、自分に目が向かうのよ。我が我がであなたより私が大事になっちゃうのね。
母ちゃんは今までに家族を4人見送ってきたけれど、他に近所の人とか友人とかの話を聞いていると、一つわかったことがあるよ。大切にされている人、生活に問題のない人はぼけるのが早くなり、自分一人で生きている人はぼけるのが遅くなるってこと。一人で生きている人は誰にも頼れないからおちおち、ぼけてもいられなくなるのでしょうね。その持論からいけば、母ちゃんも年なみに人並にぼけます。父ちゃんもぼけます。きっとあなたたちも将来ぼけます。それが普通のことだから。だから、母ちゃんが死んでいなくても、使い物にならなくなった時からを想定して、話していくわね。
今、母ちゃんは「エンディングノート」を準備しています。「エンディングノート」と言うのは個人の基本情報を記録したり、資産の詳細を示したり、自分が死んだ後どこに連絡してどのように葬式をするのかとか、家族に向けて残す最低限の情報を記入しているものです。これがあれば先ず葬式までは乗り切れると思います。でも、葬式を済ませた後、どのような社会的手続きが必要になるのか、親戚とかとどのように付き合うのかとか、遺産の分割はどのようにすればよいのかとか、途方にくれる材料はいっぱいあるのです。
これも母ちゃんの独断な意見ですが、まっとうに生きてさえいれば困ったときは必ず誰かが助けてくれます。ちょっと困ったではなく、ぎりぎり困ったときです。そして、危機がされば縁が遠くなっていき、まるで自分を助けてくれるかのように出会う人という者がいるのです。但し、お金で困ったときは例外です。お金だけは身内しか貸してくれません。極端な言い方をすればお金の問題は親か兄弟にしか相談してはいけません。もし、それ以外の親類に相談するときは必ず兄妹合意の上で、必ず事態が好転する見通しがある時のみと、心に決めておいてください。
自分の責任は自分が負うのです。生きていりゃ、いろんなことがあるのです。自分のせい、他人のせいでとんでもない所に押しやられることなんか1度と言わずあるものです。そんな時はただ、覚悟さえあれば乗り切れます。他人を頼れば裏切られます。他人を頼みにすればうっとうしがられます。自分が自分で責を負う覚悟さえあれば、どのような問題も先行く道がみえると思います。あなたたちは未婚でスタートが遅いけれど、幸せに向かって頑張ってと、エールを送るよ。
余談になるのだけれど、母ちゃんが初めて家族を見送ったのは44歳の時だったよ。子供たちは正に今からお金がかかり始める時だったんだけれど、母ちゃんの弟と二人で協力して何とか葬式・法要をすませたんだよ。ところが、翌年に又葬式を出すことになっちゃってね。しかも折あしく、母ちゃんと弟は逃げ切れない他人の借金問題に巻き込まれて貯金どころか、借金まで背負っている始末。自分の母ちゃんなのに葬式をだしてやれない。どんなにしても20数万のお金がたりない。でも、母ちゃんはお父ちゃんの給料でたちまちはしのげるし、自分も働いているから半年あればその20数万のお金を埋めることはできると思ってたんだ。それで、弟に母ちゃんのお父さんのお兄さんにお金を借りにいってもらったのよ。母ちゃんのお父さんは商売をしていたのだけれど、うまくいかなくなってから、そのお兄さんに何度も借金していて、借金に来るのならもう来ないでくれとまで言われたことも聞いていた。それなのに、今度はその息子までが借金を頼みに行くなんて、もう申し訳なくて申し訳なくて。でも、母ちゃん絶対に返すつもりだったし、頼るところはそこしかないしで。弟に行ってもらったよ。弟は伯父さんに葬式の見積書を見せて説明し、私と弟が巻き込まれている借金問題についても話して20万の借金をお願いしたの。そしたら、伯父さんは「心配せんでいいから」と弟を斎場に帰し、葬式当日のお香典に見積もり金全額を入れてくれていたのよ。香典袋を開いてどんなに嬉しかったか。安心したか。感謝してもしきれない。そのお金を見たとき伯父さんの心意気を見て、かえってお金を返せてないのだけれど、弟は次代に返すつもりだよ。
まぁ、とにかく母ちゃんはエンディングノートの作成頑張ります。母ちゃんはPCにダウンロードして、使っているから暗証番号も後できちんと教えるね。もし、書き終わらない内に死んでもあなたたちが容易に想像できる暗証番号にしてあるからね。書き終わったら、USBに移して暗証番号と一緒に残しておくからね。
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