3.遺言について(法定相続よりも優先される)

 母ちゃんは遺言をする派ですが、父ちゃんは意思をもってしない派です。特に自分の財産のない母ちゃんの場合は、自分が父ちゃんより先に死んでしまった場合せっかく遺言をしていてもあまり意味がないです。わずかの預金を兄弟でわけてもらうくらいですね。父ちゃんが先に死んだ場合は、そうはいきません。土地、建物の不動産がありますからね。遺言がないため相続人による法定相続に移るか、誰がどのように相続財産を相続するのかを相談します。法定相続をする場合は法定相続人になれる人も決まっていますし、各法定相続人の分配割合も決められています。

 もし、遺言があった場合はこの法定相続人や法定相続割合を飛び越えて、遺言が優先されます。遺言の種類は幾つかあるのだけれど、種類は関係ありません。遺言は財産の所有者が贈られる人の受贈意思を確認せずに、勝手に「あなたにはこれをあげるよ」「あの子にこれだけあげたから、あなたは法定相続の割合より少ないけれどこの額をあげます」と、贈る側からの一方通行の強い意志なのです。

 最も、法定相続よりも優先される遺言だからこそ、救済措置も用意されています。例えば、遺言でお兄ちゃんだけに財産の全てを残されたとする。当然妹は怒るよね。その場合は遺言がなかったと仮定して、本来の法定相続割合を基準にして法定相続割合の1/2の相続権利を法律によって保障されます。難しい言葉で言えば遺留分侵害請求というのを裁判所に提出してその保障分を相続することになるのよ。ちょっと前までは、その遺留分によって相続したものは、相続対象の全てに対しての権利だったから、お金以外の家にも車にも相続の持ち分権利があったから、ややこしい問題もさらにでてきたのだけれど、今は遺留分に相当するお金を払えばいいことになってるわよ。でも、こんな風に法律は変わるから、相続で問題が発生したらもう兄妹で喧嘩することなく、すぐに弁護士さんか司法書士さんの所に依頼に行ってください。相続問題はなかなか当事者で解決することはできません。

 さりとて、弁護士を依頼すると費用がかかります。弁護士に依頼すると先ず着手金の支払いがありますからね。それから本来の相続案件についての報酬が発生します。そして、相続問題とくれば調停やら裁判やらとなってくるわけですが、一つの問題から又次の問題が発生することはよくあります。そうすると、弁護士費用はその案件ごとの報酬を支払うことになるので、揉めるほどあっという間に弁護士費用に100万円というのはありえる話しです。だからね、そんな無駄な費用を払わずに双方納得のいくようによく話をして、折れ合うところは折れ合い、譲り合えることは譲り合って相続してくれるのが、母ちゃんの望みです。これを相続人同士で分配方法を決める「遺産分割協議」と言います。

 でも、もしどうして折り合いがつかなかった場合はその揉め具合の複雑さにより、弁護士に依頼するか、司法書士に依頼するか決めてください。あまりもめていなければ司法書士にお願いするのが、後々都合よいかもしれません。先ず、報酬が司法書士に依頼する方がずっと安いです。自分達で話し合った遺産分割協議内容も遺産分割協議書に作成してくれます。不動産を取得した場合は不動産の名義変更もしてくれます(遺言書や遺産分割協議書がなければ不動産の名義変更は申請できません)。相続に関しては行政書士の受任する内容もあるけれど、必要があれば税理士の紹介も含め連携して相続を進めてくれます。

 母ちゃんが父ちゃんより長生きして、しかもまだ事務能力が残っていればあなた達と一緒に動いて、相続の経験をさせてあげられるのだけれど、もし母ちゃんが死んで父ちゃんが残った場合は家は会社がある分あなた達に大変な思いをさせるかと思います。本当は父ちゃん母ちゃんの2人でしている会社だから、そろそろ個人商店に組織変更するべきなのだけれど、会社債務が残っている間は、会社形態での営業が都合よいから、組織変更もできないのです。

 父ちゃんが商売を始めたころは会社の形態に「有限会社」という「株式会社」よりも法的な規制の少ない会社形態があったのよ。それが法律が変わってしまって、今では有限会社という会社形態はなくなり、「みなし株式会社」として扱われるようになっています。おかげで「父ちゃん母ちゃん商売」の会社でも手続き的には株式会社同等に行わなければならい事が多くなっていてね。もし、母ちゃんが先に死んだら最低でも会社の解散登記をあなた達にお願いするようになると思います。当然これも司法書士に頼むのですがね。父ちゃんは事務的なことは一切苦手だし、頑固に会社形態に固執するかもしれないので、この会社関係に関してを母ちゃんは遺言をしようと思っています。でも今は、会社債務の返済を頑張りますね。

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